衝撃だった。呆然としてしまって、しばらく動けなくなってしまった。
しかも実話が元で作られているなんて、、、。
映像、美術、演技、脚本どれをとっても素晴らしかった。なんといってもめちゃくちゃ考えさせられた。


あらすじ:

1926年、デンマークで仲睦まじく暮らす、風景画家と肖像画家の夫婦。ある日、女性モデルの代役を引き受けた夫・アイナーがストッキングを身に着けた瞬間、自らの女性性を自覚する。やがて性転換を決意し、性医学を学ぶ一方、妻・ゲイルは献身的に彼を応援する。

                    監督:トム・フーパー
メインキャスト:エディ・レットメイン(夫/アイナー        女性/リリー)
                                アリシア・ビカンダー(妻/ゲルダ)    他

ある晩、夫が自分の下着をつけているのを発見してしまったら、、、。

  リリーの苦悩も、ゲルダ(妻)の戸惑いもひしひしと痛い位伝わってきた。

私は主にゲルダの視点で本作を見た。
ある日突然、夫としての人格を放棄するアイナーに対して、動揺を超えて怒りや悲しさを感じるゲイル。

もし、私が彼女なら離婚してしまうかもしれない。「ここまで隠してきて、いきなりもう夫ではいれないって何よ!何にも知らなかった、、。」と。

愛する夫はもういないと突きつけられたら、関係を続けられない気がする。

しかし、ゲルダはリリーに寄り添い続ける。
夫の中の女性人格・リリーを自覚させたきっかけを作ったのが自分だということに責任を感じているからか。
リリーの、ビジネスパートナーとしての必要性や、心身の違和感に苦しむ姿があまりに辛そうで見捨てるわけにいかない、、という理由もあったのだろうか。

いずれにせよ、ゲルダは最愛の夫を失う覚悟を持ってリリーを受け入れた。
彼女の愛の強さよ……。



    リリーはというと、心身共に自分自身でありたい。女として生きたいけど、ゲルダのことも深く愛している。彼女を失いたくない。でも、夫にはもう戻れない……と葛藤し、体も男から女への変化に苦しんでいる。

なりたい自分になるために、愛する人を失う覚悟。心身の苦痛を引き受ける覚悟。

すごい勇気だと思った。

いつかはどうせ死んでしまう。1度きりの人生なら、できる事は何でもやって自分らしく生きたい。それがたとえ一瞬しか叶わなくても……。そう思えるほどの強い思いがあったのだろう。

性転換手術の後、リリーが浮かべた輝くような笑顔が忘れられない。


キャスト陣の演技と演出が素晴らしすぎて、、、

    まず主演のエディ(アイナー/リリー役)の演技がすごい!
映画「ファンタスティック・ビースト」での彼と同一人物だと思えない程の変容ぶり。
序盤からアイナーの笑顔が本当に女の子なの。女装していないし、男の仕草なのに、心の中のリリーが透けて見える。

    アリシア(ゲルダ役)も感情の変化で、見た目がめちゃめちゃ変わるのがすごい。
少女のような目をして、若くて、美しい女性かと思えば、涙でぐちゃぐちゃになって、何歳も老けたように見えることもある。
    
二人とも本作でアカデミー賞主演男優賞、助演女優賞など受賞したそう。さすが。



本作の実話とは違う、クリエーションされているところとして、LG BTQに対する差別や周りの動揺などが盛り込まれているそう。原作との違いをいろいろ調べてみたけれど、より多くの当事者たちにリアリティーを感じさせる効果を出していると思った。


コペンハーゲンとパリが主な舞台。風景は美しいし、二人とも画家なだけあって室内にはキャンバスがそこかしこにあって美しい……。

ハードなストーリーだけど、登場人物たちがすごく生き生きしていて画面も美しいからどんどん引き込まれてしまった。

見終わった後も、しばらく他の作品が手につかなくなるくらいの余韻を残してくれた作品。素晴らしい映画に出会えて良かった。