面白すぎて、一気読み。
この本は書店員の情熱的なポップに惹かれて買った。
この小説と出会わせてくれた書店員さん、、ありがとう!!!!
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    読後、感嘆の声が出てしまう。単なる青春音楽小説にとどまらない、ハラハラドキドキの展開。舞台は冷戦時代の東ドイツ。歴史が変わる瞬間の興奮とめくりめく人間模様。
信頼とは?理解とは?

    この小説は、東ドイツに留学した日本人のピアニストの話だ。私は冷戦の時代に生きてはいないが、主人公を通じて、抑圧的な灰色の社会を感じ、共に息苦しくなり、共に興奮し、音楽に酔いしれ、没頭することができた。本書を読み終わった後は、ベルリンの壁崩壊の当時の映像を調べて、沸き立つ思いだった。
    激動の時代や友人たちに翻弄されながらも、自分の音を探していく姿には、価値観やライフスタイルがどんどん変わっていく現代において、どう自分の軸を見つけて確立していくか、という問いに、一つの答えを与えてくれているようでもある。


没入感MAX!の立体的読書

今回は、音楽小説ならではの楽しみ方である、曲を聴きながら本を読むという、より立体的な読書体験を楽しめた。今まであまりクラシックに興味がなかった私も、音楽を文章で表現する巧みな描写と、登場人物たちの熱量に魅了され、クラシック音楽に惹かれていった。

そして、ストーリーの展開はぐんぐん先に進んでいき、単なる成長物語にととまらず、中盤からはどんどんサスペンスチックになっていって、読み手の予想を鮮やかに裏切り、翻弄させてくれる。序盤から同級生たちの差別や侮辱に毅然として言い返していた主人公をなかなか聡明だなぁと思っていたが、彼らの友人たちはもっともっと上手で、主人公のみならず、自分もここまで厳しい抑圧社会を知らないと言う点で、いかに平和ボケをしてるかと言うことを思い知らされた。


予想を裏切りまくる、後半戦

    主人公の持ったあらゆる第一印象はことごとく覆されて行き、裏の裏を読んでいかないと、真実にたどり着けなくなっていく。恐ろしい監視社会の中で、主人公が自分の音を失ってしまい、スランプに陥り、誰も信じられなくなるような中、ライバルたちの圧倒的な音楽に叩きのめされながらも、自分の音を見つけていく過程や、激動の時代にきちんと自分の意見と態度を貫けるようになっていく主人公に感動した。


    物語のエンターテイメント性だけでなく、きちんと歴史や社会に関心を持っていかなくちゃなぁ、と思わされた。
そして印象だけで物事を見てはいけないのだという事と、きちんと自分で考えて意見を持つことがとても大切なのだということを感じた。

読んだ方いれば、ぜひ5/28日のbook & journey で語りましょー!