ずっと気になっていた東京竹芝にあるダイアログ•イン•ザ•ダーク「対話の森」に行ってきた。

ここは視覚障害者の方がアテンドとなって、完全な暗闇の中で様々なアクティビティをしながら、みんなで対話しようというコンセプトの場所。

以前、このダイアログの書籍を読んで、めちゃくちゃ行きたい!と思っていたのだ。
この本はJ-WAVEとのコラボ企画で、完全な暗闇の中でラジオ収録を行ったものを書き起こした本。

    今回は、参加者全員が1人で参加することを前提に組まれたプログラムで、開始時間が近づくと、それらしき一人客が集まってくる。

この人たちとどんな時間を過ごすんだろうと胸を弾ませながら開始時刻を待った。

いよいよスタート時刻になると、アテンドさんの周りに参加者が集められる。


    ここから先の記憶は、完全に音と体感だけのもの。多くの場合、記憶はその情景とともに思い出されるけれど、今回はそうではなくて、音や足の裏の感覚や、人のあたたかさ、その時の感情が鮮やかに思い出されるから面白い。

    本格的な体験に入る前に、薄暗い部屋に入って、説明を受けた後、唯一の光源であったライトが消される。

パチッ

思った以上に暗い。本当に何も見えない。

自分の身体がなくなってしまったみたいに体の軸がゆらぎ、奥行きや距離感が全く掴めない。

ワクワクしたのはほんの数十秒で、全く何も見えないということにだんだん怖くなってきた。
映画館でも舞台でも非常灯があったりするから、完全な暗闇は初めて体験したかもしれない。
ほんの少し歩くだけでもこわい。


「では自己紹介しましょう〜!」と、どこかでアテンドさんが言った。

今かい!名前と顔が一致しないじゃん!😂
一致する必要もないけど!

順番に名前を言うにも、次が自分なのかどうか目視できないから聴覚をフル活動させる。
自己紹介も終わり、少し気持ちもほぐれたところで、
「それじゃあ私についてきてください!森に入りますよー。」
とアテンドさんが部屋を出ていく。

いやいやついて行くって見えないよ〜待って〜💦

「何か手に触れた!木があります!」
「ふかふかしている!草かもしれない」
「ぶつかっちゃった!これ誰ですか?」

暗闇の中、うろうろと進んでいく私たち。
光があるところで見たら、さぞ滑稽だろうなあ。

    ゆっくり木々の間を抜けてていくと、少し開けた場所に出た。
そこでみんなで手をつないで円になって座り、互いの名前を呼んで、音を頼りにキャッチボールをする。
難しそうだけど意外と出来るんだな、これが。

さらに進んで今度は電車に乗る。
「電車どこー?」「多分もう乗ってるよー笑」
「座席どこー?」
「わ!非常ボタン押しちゃったかも!」「それ扇風機のスイッチだよー」

広い暗闇の中で、離れ離れにならないよう、みんなが声を掛け合って、時には手を取り合って行動していくうちに、初対面なのに一体感が生まれてくる。
電車のボックス席に4人で座れた時は、高校の友達と一緒に旅行してるんじゃないかってくらい、女子会的空気に。🤣

その時、普通の列車もディズニーのモノレールみたいに賑やかでいいんじゃないかと言う話が上がった。確かに、子供が騒いでも赤ちゃんが泣いても優しく見れるような賑やかさがあったら素敵だなぁと思う。

    電車に乗って向かった先は、、、ネタバレになりそうなのでここでは秘密にしておきます🤭

    初めは歩くのもやっとだったのに、目を開けてるのか閉じてるのかすらも気にならなくなっていることにふと気がつく。
見ることを諦めて、他の感覚を頼りに動くことができるようになる頃には、不安は安心感に変わっていた。

    ダイアログに参加した理由をみんなで話していた時に、自己開示ができるようになりたくて参加したという仲間がいた。暗闇では全然シャイな印象が無かったので意外に思うと同時に、私も暗闇が人にどんな変化をもたらすのか気になっていたのでなるほどなぁと思った。

    暗闇の中だと肩書も視覚情報もないので、歳の差を気にすることもなく、目線を気にすることもなく、子供に戻ったような感覚で心のままに話ができたのがすごく良かった。
他のみんなも、暗闇の中で、お互いのことを知っていって、信頼関係ができてゆく。

みんなで何かについてしゃべる時も、意外と同時に話し始めて「あっ    あっ」ってなることが少なくて、最後の方ではすごく自然に話ができるようになったのが不思議だった。


    あっという間に90分間が過ぎ、明るい場所に戻ると、こんな人たちと喋ってたんだー!、と改めてびっくりする。
その人の声は知っていて親近感はあるのに、見た目と一致しない、という不思議な矛盾が起こる。

「あの話をしていたのがあなただったのね!?」
暗闇から出てから、誰が何の話をしていたか照合するのもまた面白い!

    この短時間で世代を超えて、これだけ距離が縮まるというのはすごく素敵なことだなぁと思った。バーチャルのつながりでは、こんなミラクルが起こる事は、まず無い。感覚だけでつながる、ってこういうことなんだなぁ。

たった90分しか一緒にいなかったはずなのに、別れるのがこんなに名残り惜しくなるなんて、、。


    ダイアログ・イン•ザ•ダーク、たくさんの新発見があってすごく面白い体験だった。季節が変わるとアクティビティーも変わるということで、また参加してみたい。
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今回の本の神フレーズ!

諦めることで次が開ける。
暗闇の中で目で見ようとすることをやめると、他の感覚が鋭くなって、見えなくても動けるようになる。
手放すことで解放されるものがある。


ではまた!