こんばんは、だっちです。


今日は珍しく、日本文学の里から投稿をしてみます😁


今回紹介する「山月記」は、高校の現代文の授業を通して大好きになった作品です。


今日改めて読み返してみると、やっぱりめちゃくちゃ面白かったなと思いましたし、高校生当時とは全く違う感覚で読むことが出来ました😊


今回は、特に印象に残った部分を太字アンダーラインで示しておきたいと思います👍



下の方に感想を記しておきますね!😁


何故こんな運命になったか判らぬと、先刻は言ったが、しかし、考えようによれば、思い当ることが全然ないでもない。人間であった時、己は努めて人との交を避けた。人々は己を倨傲だ、尊大だといった。実は、それがほとんど羞恥心に近いものであることを、人々は知らなかった。勿論、曾ての郷党の鬼才といわれた自分に、自尊心が無かったとは云いわない。しかし、それは臆病な自尊心とでもいうべきものであった。己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。かといって、又、己は俗物の間に伍することも潔しとしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である。

己の珠に非あらざることを惧れるが故ゆえに、敢えて刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった。
己は次第に世と離れ、人と遠ざかり、憤悶と慙恚とによって益々ますます己の内なる臆病な自尊心を飼いふとらせる結果になった。人間は誰でも猛獣使であり、その猛獣に当るのが、各人の性情だという。己の場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。虎だったのだ。これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、果ては、己の外形をかくの如く、内心にふさわしいものに変えて了ったのだ。今思えば、全く、己は、己の有もっていた僅わずかばかりの才能を空費して了った訳だ。人生は何事をも為なさぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、刻苦を厭とう怠惰とが己のすべてだったのだ。己よりも遥かに乏しい才能でありながら、それを専一に磨いたがために、堂々たる詩家となった者が幾らでもいるのだ。虎と成り果てた今、己は漸やくそれに気が付いた。それを思うと、己は今も胸を灼かれるような悔を感じる。己には最早人間としての生活は出来ない。たとえ、今、己が頭の中で、どんな優れた詩を作ったにしたところで、どういう手段で発表できよう。まして、己の頭は日毎ひごとに虎に近づいて行く。どうすればいいのだ。己の空費された過去は?    己は堪まらなくなる。そういう時、己は、向うの山の頂の巖に上り、空谷に向って吼ほえる。この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。己は昨夕も、彼処で月に向って咆えた。誰かにこの苦しみが分って貰もらえないかと。しかし、獣どもは己の声を聞いて、唯だ、懼れ、ひれ伏すばかり。山も樹きも月も露も、一匹の虎が怒り狂って、哮っているとしか考えない。天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己の気持を分ってくれる者はない。ちょうど、人間だった頃、己の傷つき易やすい内心を誰も理解してくれなかったように。






感想


・自分の臆病な自尊心、尊大な羞恥心について改めて自覚することができた。→行動に繋げる


・人は誰でも猛獣使い。臆病な自尊心や尊大な羞恥心に加えて、自分の中に潜んでいる感情や性質が猛獣となって自分を縛り、他者を傷つけることはしばしば起こり得る。


・しかし著者が、ありのままの自分を見せないことが良いという話をしたいのかと言うと、恐らくそうではない。


・問題の本質はむしろ、李徴が自身の個性を一つであると捉えてしまったことにある。
自分のアイデンティティや生きがいは勉学や名声のみに存在すると思い込んでしまった李徴は、自身の努力が社会に認められなかったことで、自らの個性ひいては自身の生に対しての自信を無くし、生きる意味を見失った。その結果として彼は人間としての「考える」という営為を捨てることで、自らのプライドを保とうとしたのだ。


僕は、プライドなんてくだらねーなと思いつつも、


なんだかんだ人には一つか二つは譲れないものってあるよね、と感じました。



プライドがあるからこそ、臆病な自尊心や尊大な羞恥心が湧き上がる。
それは間違いなくマイナスではある。


しかしプライドがあるからこそ、自分の人生に意味を見出すためのチャンスが生まれる。



プライドのない人生は楽だし、面白い。
何にも縛られない自由な生き方だからだ。


(実際自分は勉強に関してはプライドがあるのかな?と思いますが、それ以外の面に関してはあんまりプライドがないので、とても楽しいです♪)

しかしそんな状況で、あえて自分にプライドを持てるという事実は、
自分だけの人生の意味や譲れないものが生まれるという点で、
とても幸せなことだと思う。





今回は以上です!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました😊